まんがとサブカルチャーの図書館ができるまで


ゲンロン友の会会報「ゲンロンエトセトラ#3」で、東京国際マンガ図書館の記事(東浩紀・森川嘉一郎の対談)が掲載されてました。
現在公開されているプランは、神田の明治大学近くの廃校になった中学校を改装するものですが、別の場所に新校舎を建てる案も検討されているとのこと。これがすごくワクワクするプランで、『輪るピングドラム』で話題になった図書館の元ネタと言われるものを参考にしているそうです。
※ストックホルム図書館の増築の設計コンペ 応募案
http://blog.longnow.org/02009/12/08/wall-of-knowledge/

森川  むしろ東京国際マンガ図書館は、保存の観点から、蔵書の大部分を閉架にせざるを得ません。でも、できれば蔵書の規模は見せたい。この展望書架のいいところは、閉架であっても蔵書を見渡せるということです。
東  展望書架!それはおもしろい!なるほど、だからこの縁のところから利用者が望遠鏡で見ているわけですね。(中略)この案は単にデザインだけではなく、コンセプトとして本当にすばらしいですね。戦後日本のマンガ文化の集積がマッシブな平面として立ちあらわれていて、それを遠くから双眼鏡で眺めるというこの構図そのものが、現在の日本のありかたを象徴しているように感じられる。
森川  「量」もある閾値を超えると「質」に変わるわけですよね。マンガやアニメやゲームは新しいもののように思われがちですが、実は歴史をそれなりに蓄積してきているので、そのことの重みもこういう見せかたをすれば体感的にわかるんじゃないかと思うんです。(中略)ヴェネチア・ビエンナーレの「おたく」展でも、趣味が集積して生まれる新たな「質」をいかに見せるかということはいろいろと考えました。そうした試みの延長線上に複合アーカイブ施設としての東京国際マンガ図書館のコンセプトがあります。

まだ案なので具体的なイメージは掲載されてませんでしたが、ひょっとしたら『思想地図β3』に載るかもしれません。
また、森川嘉一郎氏の個人史も興味深かったです。研究者としてのキャリアは建築学からスタートしてますが、なぜオタク方面に関わるようになったのか。
その根源は、アニメやマンガが好きだったのに、少年期を海外で過ごしたためにそれらを十分に味わえなかった飢餓感にあると自己分析してます。大学では、絵を書いたりプラモを作ったりする延長で、図面や模型を作るのがおもしろそうだからと建築学科に進みます。その後、宗教建築としてのデザインが存在しないオウムの施設に衝撃を受け、これからはトップダウンの設計・計画ではなく個人の趣味が都市空間をデザインするという着想を得て『趣都の誕生』を著します。それがヴェネチア・ビエンナーレでコミッショナーを務めた展示「おたく:人格=空間=都市」につながり、その展示物の収蔵先を求める内に、故・米沢嘉博氏や先日亡くなられた現代マンガ図書館の内記稔夫氏と出会って本格的なマンガのアーカイブの必要性を痛感。そのために奔走している内に、明治大学に新たに開設された国際日本学部に招聘され・・・聞いてると、この人は東京国際マンガ図書館を作るために生まれてきたんじゃないかと思えます。
今の日本にこの人がいてよかったと、心の底から思います。もう、この件で国があてにならないのは分かっちゃいましたし。
完成目標は2014年度。あと2年あまりですが、どこまで進んでいるのか。
とても楽しみです。
 

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