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確かに見たことある、こんなシーン。
「フード理論」などというと、ちょっとフザケてるように聞こえるかもしれません。
筆者の福田里香氏によると、フィクションの中で食べ物を上手に扱うことは「登場人物の性格や感情、置かれた状況を、鑑賞者へ伝達するのにきわめて有効」であり、その観点から導き出した「フード三原則」が、
 1.善人は、フードを美味しそうに食べる
 2.正体不明者は、フードを食べない
 3.悪人は、フードを粗末に扱う
なのです。改めて言われるとなんてことない様ですが、具体的に例を上げて説明されると目からウロコ。
こういうフード描写が特に巧みな映画監督して、宮崎駿が挙げられています。
彼女に言わせると「確固としたフード文法を持つ稀有な作家」で、それは、よく言われる「ハイジのパンっておいしそうだよねー」とかいうレベルの話ではありません。
もし、そのキャラクターが善人なら「飼っている動物には、きちんと餌をあげる」。
言われてみれば、ナウシカはテトにチコの実を食べさせ、パズーはシータと一緒に鳩に餌をやります。それも、自分が食事をする前に(これは本書を読むまで気付きませんでした)。このことで、キャラクターの善人性がさらに強調されるのです。
こういう絵を見せることで、セリフに頼らずにキャラクターの印象を観客に刷り込んでいく訳です。演出ってこういうことなんですね。
こんな調子で、食べ物が登場する様々なシチュエーションを取り上げ、例えば、
「カーチェイスで、はね飛ばされるのは、いつも果物屋」とか、
「マグカップを真顔でかかえたら、心に不安があるか、打ち明け話がはじまる」とか、
「煙草を手放さないひとは、心に秘密を抱える傍観者だ」とか、
言われてみればすぐに具体的なシーンが目に浮かぶようなあるあるシチューエーションで、そのような描写がいかに効果的か、解説していきます。
これを読んだあとでは、映画やマンガを見る目が変わります。実際に作品を作る人にもすごく参考になるでしょう。
ちなみに、本書では触れられてませんが、フード描写がうまい映画監督・黒澤明について、筆者があるラジオ番組で語り下ろしたものが、podcastで聞けます。こちらも必聴。聞いた後に「七人の侍」を見返したくなります。
サタデーナイトラボ「福田里香のFOOD理論」【前編】|ライムスター宇多丸のウィークエンド・シャッフル
サタデーナイトラボ「福田里香のFOOD理論」【後編】
実は、本書のあとがきにも書かれているとおり、このラジオ番組での喋りがきっかけで、本書が生まれたとのこと。
表紙・装画はオノ・ナツメ。装丁もカッコイイ!
カバーを外すとさらにすてき。
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筆者の本業はお菓子が専門の料理研究家。
こんな本も出していて、こちらではマンガ作品にちなんだお菓子とそのレシピを紹介。
羽海野チカ先生等とのフード対談も非常に面白いです。
はぐちゃんはなぜ肉食なのか、真山はリカさんになんて声をかけるのか・・・
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当店 ブックス・カルボにも在庫あります。よろしければどうぞ。